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葉落花謝

変そう花壇が


 古びた雑居ビルの二階に向かい薄暗いフロアにある一室のドアを開くと、仕事をしている後ろ姿のN野氏。「別に仕事を探しに来たんじゃないんだったらいいよ、ところで挨拶は?」それとも金でも借りに来たのかと、言葉の内容は刺々しくぞんざいなものだったが、こちらに見せた表情が力なく影が差し込んでいるのは日当たりが悪いだけでは無さそうだ。
 仕事があれば呼ばれているはずだし、そうでないということはやはりうちらには仕事を回してくれるつもりはないのか、なんとなく分かっていたが残念な気持ちになった。最近請け負い始めた、ガス会社の警備をしている青いツナギを着た派遣スタッフの男性三人が、いつの間にかN野氏の周りに集まっていたから。
 帰ろうとすると、壁際にロッカーがずらりと並んでいるためひと一人しか通れない道を数人のスタッフらしき人間によって通せんぼされ、特にツナギの若い男は念入りにその役割を果たしていた。自分の前のロッカーに両手を伸ばし、背中を丸めてスペースを出来るだけ開けないようにして通さないつもりなのだ。腹が立ったので、目の前の男性が塞ぎきれていない隙間から手を伸ばすと若い茶髪の兄ちゃんの腰をがっちり掴み、徐々にこちらに引き寄せるとふんぬと力を込めブレーンバスターを掛けた。見事逆さから落ちる。垂直落下式!!
 
 後ろを返り見ると地面に崩れ落ちたその姿があったが、身体の傾きの感じからして首の骨は折れていないみたいだった。少し安心して部屋を出ようとした際に仲間のツナギ連中に呼び止められる。「あいつは前にもやられているんだ、手を出すことはないだろ」「こっちの知ったことじゃない、お前らが悪いんだろうが」と応戦。

夢を振り返って:N野氏は藁半紙の答案用紙に赤ペンで採点していた。机の右に置かれたものには100点、正面に置かれまとめられたのは60点とどうやら教師のバイトも始めたのかもしれない、と。その姿を見たときは奴さんも少なからず大だと思わずにいれなかったものだ。


 一般的には有名なA駅前は意外と栄えていないと思っている。すぐ近くの私鉄や地下鉄駅のB、C駅の方がずっと人の流れも多いし、店も色々とあると友人に伝える。彼はこちらの話を聴いていない。無表情に正面を向いているだけなので間違ったことを口にしたか、言い方が不味かったかと何かを失敗した気分になり、再び彼の顔をそっと窺う。
 A駅構内を出ると目の前は視界を妨げるくらいの高さの広がっていた。地面からの高さは2mくらい、横幅は数十mあるようだ。
 ふと視線を上へやると焦げ茶色の旧いビルが見え、屋上の少し下あたりに『デザイン学校』との名称をロゴにかたどったピンク色の文字。中は事務所みたいな造りで雑然としていて、学生の姿は見えない。コピー機の前を一人の男性が行ったり来たりと忙しそう。

 信号を渡ろうと、足を一歩進め終えたそのときに中年男性に声を掛けられ、自分は宇都宮あたりに住んでいると突然告げられる。話を聴いてみれば、大学が自分の家だということなのだとか。信号を渡ったところでいい話を教えてあげるとの耳打ちがあり、男性の携帯電話番号をメモするようにと話を継ぐ。怪しく感じるが、番号を聞くだけならまあいいかと画面を見せてもらうことにする。
 自分の電話帳に登録が済むと、目の前の人物の名前として打ち込んだはずの「箱崎」が「箱龍」に勝手に切り替わる。この名前は以前に登録した怪しい男リストの中の一人だと気がつく。やはりそうだったか、と。

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